第88章 憧れ

小山茜は唇をきゅっと結び、険しい表情のまま口を開いた。

「社内のスパイなんて、確かに害虫よ。会社にだって多少の悪影響はある。でも――それより何より、肉腐れ病の特効薬の処方箋のほうが重要です」

「もし万が一、あいつらに配合を盗まれでもしたら……損失は取り返しがつかない」

「スパイなんて、あとからでもまとめて狩れる。今は急ぐ必要、ありません」

工藤達央は小山茜の言いたいことをすぐに理解した。

彼女が恐れているのは、スパイの存在そのものではない。処方箋が外へ流れることだ。

「安心しろ」

工藤達央は肩の力を抜き、軽く笑う。

「肉腐れ病の治療配合は、もう全部頭に入ってる」

「研究室に...

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